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最高裁判所第一小法廷 昭和31年(あ)3054号 判決 1957年4月25日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人能勢克男、同坪野米男、同水谷長三郎の上告趣意第一点について。

原審の是認した第一審判決の認定した事実によれば、被告人らは判示会社と争議中組合員数十名とともにスクラムを組んで大島とし外四名をとりかこみ、労働歌を高唱し、ワッショ、ワッショと掛声をかけて気勢をあげながら、約二〇分間に亘り、押す、体当りをするなどの行動を続け、以て多数と共同して右五名に対し暴行を加えたというのであって、かかる被告人の所為が刑法二〇八条の暴行にあたることは明らかである。そして、所論労働組合法一条二項は、勤労者の団体交渉における所為について無条件に刑法三五条の適用があることを規定したものではなく、右所為が刑法所定の暴行罪又は脅迫罪等の犯罪にあたる場合においてもこれを正当化するものと解することを得ず、かかる所為は憲法二八条の保障する勤労者の団体行動権の行使にあたるものといえないことは当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)三一九号、同二四年五月一八日大法廷判決、集三巻六号七七二頁)。それ故、所論は採るを得ない。

同第二点について。

所論は違憲をいうが、その実質は事実誤認、単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同第三点について。

憲法三七条一項の公平な裁判所の裁判とは、所論のような場合をいうものでないことは当裁判所の屡次の判例とするところであって(昭和二二年(れ)四八号、同二三年五月二六日大法廷判決、集二巻五号五一一頁)、所論は採るを得ない。

被告人山崎佳郎の上告趣意は違憲をいう点もあるが、憲法第二八条違反の主張の採ることを得ないことは、弁護人能勢克男外二名の上告趣意第一点について説示したとおりであり、その他は、その実質は事実誤認、単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫)

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